遺産相続と聞くと、何がもらえるの?と期待してしまうものです
しかし、嬉しいだけとは限りません
負の遺産という言葉もありますから
そんなもの相続したくないと思ったら、どうすればよいのでしょうか
そこで登場するのが「相続放棄」です
被相続人のことを思うと、放棄するというのは心苦しいかもしれませんが、やむを得ない時もあるでしょう
今回は楽しい記事にはなりそうにありません
できれば相続したくない財産がある人は、知っておくべき手続きが相続放棄というものです
相続放棄ってどんな時にするの?
大切な大切な遺産を相続放棄する時って、こんな時です
① 明らかに負債が多い場合
② 相続トラブルに巻き込まれたくない場合
③ 特定の相続人にすべてを相続させたい場合
① 明らかに負債が多い場合
相続財産の中には、預貯金や有価証券のようなプラス財産もあれば、借金のようなマイナス財産もあります
相続ではプラス財産だけというのはNG、プラスもマイナスもセットで相続ということになります
マイナスが多ければ負債を抱えることになります
それを避けるために相続放棄をして全てを引き継がないという方法があります
ここでポイントは「明らかに」というところです
後からプラスの財産が出てくる可能性があるような場合は要注意です
相続放棄は、一旦受理されると撤回することができません
慎重な判断が必要ということです
また、一見するとプラス財産だと思っても、不動産は要注意です
価値がないような土地などもあります
評価額はプラスでも、売れなければ維持するだけでマイナスです
② 相続トラブルに巻き込まれたくない場合
相続では、相続人どうしで遺産分割協議が必要となってきます
お金のことになると揉めることは多いようです
普段良い関係にあっても、この機会にぎくしゃくすることもあります
また、普段良い関係にない人とは、お金の話などしたくないものです
こういう状況を避けるために、相続放棄することはあるようです
③ 特定の相続人にすべてを相続させたい場合
被相続人が家業を営んでいて、相続人の1人に引き継がせたい場合にも相続放棄は活用されます
事業用財産が複数の相続人に散らばってしまっては、事業承継がうまくいきません
そこで特定の個人に財産を集中させて、事業承継をスムーズに行うためのものです
何から始めればいいの?
≪期限≫
相続放棄には期限があります
相続の事実を知った日から3ヶ月以内です
書類を取り寄せるのにも時間はかかります
放棄するかしないかについては慎重な判断が必要とも言いましたが、時間はあまりありません
≪必要書類≫
✔️ 相続放棄申述書
✔️ 被相続人の住民票除票または戸籍附票
✔️ 申述人の戸籍謄本
≪提出先≫
書類が準備できたら、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出します
直接出向くか、郵送することになります
家庭裁判所などに縁がない人が多いでしょうから、事前に調べておくとスムーズに進めることができます
最終的に相続放棄申述受理書が届けば手続きは完了です
放棄したあと残された人はどうなるの?
相続放棄した後に気になるのは次の2点です
① 相続財産はどういう基準で分けるのか
② 控除額や非課税額に関連する法定相続人の数はどうなるのか
民法では、相続放棄をした人は、初めから相続人ではなかったとみなされます
したがって、残された人だけが相続人になるため、相続人の数が減ったり、新たな相続人が登場したりします
仮に、配偶者、長男、次男の3人が相続人であった場合、
✔ 誰も相続放棄しなかった場合 ⇒ 相続人は3人(配偶者、長男、次男)
✔ 長男が相続放棄した場合 ⇒ 相続人は2人(配偶者、次男)
✔ 長男と次男が相続放棄した場合 ⇒ 両親が健在であれば、相続人は3人(配偶者、父、母)
相続放棄することにより、債務の額の一人当たりが増えたり、新たな人にその債務を押しつけることにもつながります
トラブルの火種となりかねませんので要注意です
相続税法では、「法定相続人の数」という言葉が出てきます
この数によって基礎控除額が決まったり、生命保険金や退職手当金の非課税金額が決まってきます
この法定相続人の数については、相続放棄があっても、放棄がなかったものとして数えることになります
つまり、相続放棄によって法定相続人の数には影響がないということです
このように相続放棄の取り扱いは法律によって異なります
なんともややこしいものです
FP試験でも出題されて、間違えやすいポイントです
よ~くよ~く理解しておきましょう
基礎控除額などで間違えると、結構初めから計算が狂ってきて、大きな減点になってしまいますから
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