通常、原価というものは、実績として発生するものであり、将来の原価をコントロールするというイメージは、日々の生活の中で登場するものではありません
「この商品の原価は1,000円です」という言い方はあっても、「この商品の原価を1,000円にしたいです」という会話をしているのは聞いたことがないという人が多いのではないでしょうか
一見、実績という客観的なものでしかないものに、「〇〇したい」という意思を込める活動が原価企画というものです
会社の原価管理部署に新たに配属されても、一般的ではない概念なら、その分野に入りづらいですよねぇ
そこで、まずはその意味を理解してもらいたいと思います
そして、昨今の状況から見えてきた変化や限界というものも併せて理解しておきましょう
原価企画の意義とその重要性
原価企画とは、新製品の開発段階で、あらかじめ原価を見積もりながら、製品仕様の決定に関わる全てのスタッフが、目標原価達成のために共同して行う原価低減活動です
かかった原価に一定の利益を上乗せして販売価格を決めるというような利益管理を行うのであれば簡単です
現代においては、販売価格は消費者から見た価値で決定されてしまい、想定される利益を捻出するためには、原価をコントロールする必要があるのです
また、開発段階でこの活動を行うことにより、原価低減の効果はより大きくなります
そのため原価企画は重要な活動であると言われています
✔ 開発段階での検討を行うことにより、図面や工程の大きな変更が可能となる
✔ 生産開始からモデルライフにわたって効果を長く享受することができる
原価企画の活動ステップ
① 目標設定
② 原価のつくり込みと製品仕様の決定
③ 達成度評価
① 目標設定
商品企画が決定し、製品開発をスタートさせる段階で、目標原価を設定します
まず、市場価格や類似製品の価格から消費者に受け入れられるであろう目標売価(市場価値)を求めます
それに、目標利益率などから目標利益を算出して、目標売価と目標利益の差額として目標原価を設定します
目標原価 = 目標売価 ー 目標利益
② 原価のつくり込みと製品仕様の決定
目標原価を達成するために、製品仕様や工程仕様を原価の見積もりを繰り返しながら決定していきます
この時に、製品開発・工程設計・部品調達などの関連部門が協業しながら活動を進めていくことになります
ここではなるべく組織の壁を作らないことが重要だと言えます
③ 達成度評価
製品の生産が開始され、安定的な生産・販売に移行した時点で、活動の成果を評価します
実績の原価を集計して、目標原価に対する達成度合いを見ていくことになります
ここで開発段階で想定していたものとの差額も把握することができるので、次の商品企画や製品開発に活かすことができます
どうやって原価を下げるのか
≪製品仕様に対するアプローチ≫
切り口 | 着眼点 |
なくす | ・仕様を廃止する ・部品を廃止する |
減らす | ・構成品の数を減らす ・短くする、小さくする ・軽くする、薄くする ・過剰な品質を要求しない |
変える | ・安い代替材料に変える ・加工性の良い材料に変える ・市場性のある材料に変える ・安い製法に変える ・台数に見合った作り方にする ・仕入先を変える、内外製を変える ・輸入品に変える ・構造、機能、形状を簡単にする |
統合する | ・工程を統合する ・機能を統合する ・一体形状にする |
≪工程仕様に対するアプローチ≫
生産工程の効率性を上げるための製品設計というものもあります
生産しやすい製品というものが存在していて、生産側から設計者へのフィードバックも必要となってきます
例えば、まとめて作れるよう共通化する、既存の設備を使えるような仕様にする、寸法公差を緩くして気づかいすることなく生産できるようにする、などなどです
目標原価の考え方の限界について
目標原価は、市場価値と目標利益から必然的に決まるものという説明をしてきました
しかし、直近発生している超インフレは、その考え方を揺るがしかねないものです
物価上昇により原価が上がってしまい、それを売価に転嫁することで、利益を確保することが普通となってきています
これは超インフレが市場価値を変化させているのと同じことです
一時的な現象なら良いのですが、これが通常モードになってしまうと、原価管理に対する厳しさが失われていくのではないかと危惧しています
原価が上がってしまうなら、その分をお客様に負担してもらえば良いではと・・・
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