注意点が多い結婚・子育て資金の一括贈与は活用する価値があるのか

F 相続・事業承継

相続税の節税対策として生前贈与という手法があります

その中の1つに、結婚・子育て資金の一括贈与というものがあることを知っているでしょうか

いかにも若者ウケするネーミングであり、少子化対策にも寄与するかの如くです

しかし、ネットで検索してみると、関連ワードとして「デメリット」や「注意点」といったものが並んでおり、どうも使い勝手が良くないようです

何がそんなにダメなのか、どういうケースなら活用する価値があるのかを考えてみました

制度の概要

今回取り上げたのは「直系尊属から結婚・子育て資金の一括贈与を受けた場合の非課税」という内容です

ここでポイントが3つあります

① 誰から誰への贈与なのか
② 結婚・子育て資金とはどの範囲なのか
③ いくらまでが非課税なのか

① 誰から誰への贈与なのか

「直系尊属から」となっていますので、父母や祖父母からということになります

子や孫(直系卑属)が受贈者となり、18歳以上50歳未満という年齢制限があります

② 結婚・子育て資金とはどの範囲なのか

《結婚資金》
✔️ 挙式費用、衣装代等の婚礼(結婚披露)費用(婚姻の日の1年前の日以後に支払われるもの)
✔️ 家賃、敷金等の新居費用、転居費用(一定の期間内に支払われるもの)

《子育て資金》
✔️ 不妊治療・妊婦検診に要する費用
✔️ 分娩費等・産後ケアに要する費用
✔️ 子の医療費、幼稚園・保育所等の保育料(ベビーシッター代を含む)

子育てと言っても、中学生や高校生も含めているわけではありません

ここでは幼稚園や保育所と言っているので、小学校に入る前の未就学児が対象ということになります

③ いくらまでが非課税なのか

1,000万円までが非課税です

但し、そのうち結婚資金は300万円が限度額となっています

必要な手続き

1,000万円をポンと渡して、結婚や子育てに使ってねという具合に、口約束程度で良いというわけでは当然ありません

この制度を活用するためのエビデンスをしっかりと残していく必要があります

一連の手続きは全て金融機関を通して行うことになります

《口座準備》

受贈者名義で専用の口座を開設します

この口座は他の普通預金口座とは別扱いで、この制度を活用する上での専用の資金管理口座となっていきます

併せて資金を預け入れる日までに「結婚・子育て資金非課税申告書」を金融機関経由で税務署に提出します

その後、贈与者から受贈者の口座に入金を行います

《口座からの払い出し》

結婚・子育ての用途に支出したことを証明する領収書を提出することにより、払い出しを受けることができます

領収書の提出には期限がありますので注意が必要です

金融機関によっては請求書を提出して、直接支払い先に支払い手続きをしてくれるところもあるようです

使い勝手の良い所・悪い所

毎年110万円が非課税の限度額となる暦年贈与とは異なり、一括で1,000万円を非課税で贈与することができます

うまくやれば節税効果としては大きなものです

また、父母や祖父母が認知症になって、都度贈与ができなくなるリスクを回避することも可能です

一方で、専用口座を作ったり、都度の領収書の管理は手間がかかり大変です

相当几帳面でないとやれないそうにありません

さらに、1,000万円という金額を使い切れるのか心配です

結婚資金の300万円はともかく、それ以外の700万円を子育て資金の範囲内で使い切れるのでしょうか

小学校に入学するまでの間です

使い切れなかった分にはきっちりと贈与税がかかってきます

金額設定には十分に気をつける必要があります

さらにさらに、一括贈与は無駄遣いの温床にもなりかねません

そのような教育的な観点からも心配な制度です

活用する価値がある制度なのか

そもそも結婚資金や子育て資金は、都度贈与するのであれば非課税です

教育資金と考え方は同じです

必要な都度、父母からあるいは祖父母から貰うことができれば、この制度は価値がないということになります

だからなかなか浸透しないのでしょう

但し、それには条件があります

父母との関係、祖父母との関係が、配偶者も含めて良好であり続けることが必要です

これは結構難しいことです

心配なら関係が良好なうちに一括贈与というのもありだと思います

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