年金はお年寄りのためのものと思いがちですが、実はそれだけではありません
日本の公的年金制度には、65歳以降に受け取ることができる老齢年金以外にも、病気や怪我で障害が残ったときに受け取ることができる障害年金や、一家の働き手が亡くなった時に受け取ることができる遺族年金も含まれています
したがって、年金制度は若い人にとっても大切なものと言えるのです
その中でも今回は遺族年金制度を取り上げたいと思います
この制度は昭和の時代から存在するものですが、今の時代環境に合っているかというと、やや疑問に感じています
年金制度の概要
日本の公的年金制度は、老後の暮らしへの備えや、事故などで障害を負った時や、一家の働き手がなくなった時に、みんなで暮らしを支え合うという社会保険の考え方で作られた仕組みです
そして、その構造的特徴は、20歳以上60歳未満のすべての方が加入する国民年金(基礎年金)と、会社員・公務員の方が加入する厚生年金の2階建て構造で表されます
また、日本の公的年金には、3つの受け取りシーンがあり、それぞれの場面において安心が得られる仕組みとなっています
・老齢年金:65歳以降、生涯受け取ることができる年金
・障害年金:病気や怪我で障害が残った時、障害の程度に応じて受け取ることができる年金
・遺族年金:一家の働き手が亡くなった時、配偶者や子が受け取ることができる年金
これらの2階建て構造と3つの受け取りシーンを整理すると、以下のような表でまとめることができます
老齢年金 | 障害年金 | 遺族年金 | |
基礎年金 (国民年金) | 老齢基礎年金 | 障害基礎年金 | 遺族基礎年金 |
厚生年金 | 老齢厚生年金 | 障害厚生年金 | 遺族厚生年金 |
今回は、この中から遺族年金について説明していきます
遺族年金を受け取ることができる遺族と年金の種類
遺族年金を受け取ることができる遺族は、死亡当時、死亡した方によって生計を維持されていた以下の方が対象で、最も優先順位の高い方が受け取ることができます
遺族には、それぞれ以下の条件があります
≪子、孫≫
・死亡当時、18歳になった年度の3月31日までの間にあること
・20歳未満で障害等級1級又は2級の障害の状態にあること
※婚姻していない場合に限ります
※死亡した当時、胎児であった子も出生以降に対象になります
≪夫、父母、祖父母≫
・死亡当時、55歳以上であること
遺族基礎年金の年金額
遺族基礎年金の年金額は、一律の額になります
また、子の人数に応じて加算されます
※1人目および2人目の子の加算額・・・各223,800円
※3人目以降の子の加算額・・・各74,600円
≪子のある配偶者が受け取る時≫
・777,800円+子の加算額
例えば、配偶者+子3人の場合は、
777,800円+223,800円✕2人+74,600円✕1人=1,300,000円
≪子が受け取る時≫
・777,800円+2人目以降の子の加算額
例えば、子3人の場合は、
777,800円+223,800円✕1人+74,600円✕1人=1,076,200円
(1人当たりは、その1/3になります)
遺族厚生年金の年金額
遺族厚生年金の年金額は、亡くなられた方の厚生年金の加入期間や報酬の額をもとに計算されます
≪通常の場合≫
・亡くなられた方の老齢厚生年金の報酬比例部分✕3/4=(A+B)✕3/4・・・①
A:平成15年3月以前の加入期間
平均標準報酬月額✕7.125/1,000✕平成15年3月までの加入期間の月数
B:平成15年4月以降の加入期間
平均標準報酬額✕5.481/1,000✕平成15年4月以降の加入期間の月数
≪65歳以上で老齢厚生年金を受ける権利がある方が、
配偶者の死亡による遺族厚生年金を受け取る時≫
次の①と②の額を比較して高いほうが遺族厚生年金の額になります
①:通常の場合の額
②:① ✕2/3+本人の老齢厚生年金の額✕1/2
例えば、①60万円、本人の老齢厚生年金50万円の場合は、
①・・・60万円
②・・・60万円✕2/3+50万円✕1/2=65万円
①<②のため、このケースでは、65万円
≪遺族厚生年金と老齢厚生年金との調整≫
65歳以上で老齢厚生年金を受け取る権利がある方は、老齢厚生年金は全額支給となり、遺族厚生年金は老齢厚生年金に相当する額が支給停止されます
したがって、65歳以上で老齢厚生年金を受け取る権利がある方で、配偶者が死亡した時は、①②③のうち、最も高い金額になるパターンで年金を受け取ることになります
この制度のままで大丈夫なのか?
出所:厚生労働省webサイト 統計情報 共働き等世帯数の年次推移
このグラフを見ても分かるように、日本ではこの数十年の間に、共働き世帯が相当数増えてきました
ここで注目したいのは遺族厚生年金です
女性が社会で活躍し続けると、自分の老齢厚生年金を受け取ることが最も有利となり、遺族厚生年金を受け取ることがなくなっていくと思われます
つまり、遺族厚生年金の制度は、夫婦共働き世帯が一般的になると、意味がなくなる制度なのです
もっと時代のニーズに合わせて変化させることができれば良いのですが、年金制度は支える側と支えられる側が存在し、年齢の幅がとても広いものです
したがって、その制度を改正していくにしても、多くの人に影響を与えるため、難しい問題なのだと思います
それでも、日本の頭脳である官僚の皆さんと、リーダーシップをもった政治家がいれば、改革してくれると信じております
コメント