所得税の事業所得を算出するにあたっては、収入から必要経費を差し引くことになりますが、その必要経費の中に「減価償却費」というものがあります
一見すると、これはなんだろう?と思うでしょう
PCなどで「げんか」と入力して変換しても、「原価」を選択することはありますが、「減価」といワードは聞き慣れないので、それを選択することはないと思います
しかし、この減価償却費は、事業を行う人にとっては、その内容を知らないことで、税負担が増えてしまったり、場合によっては脱税にもつながってしまいます
したがって、この機会にしっかりと理解しておきましょう
事業所得と減価償却費の関係
個人事業主などは、事業所得から負担すべき所得税の計算が行われます
ここでいう事業所得の計算式は以下のようになっています
事業所得 = 総収入額 ー 必要経費
この中で必要経費とは、収入を得るために直接必要な売上原価や販売費・管理費その他の費用のことをいいます
《必要経費の具体例》
✔️ 売上原価
✔️ 給料、賃金
✔️ 地代、家賃
✔️ 減価償却費
減価償却費の内容を十分に理解していないと、必要経費を適切に計上することはできません
そうなると正確な事業所得を算出することができず、納税額にも影響を及ぼすことにつながります
減価償却費というものの概念
減価償却費とは、固定資産の購入金額を、その使用期間にわたって分割して費用計上する会計処理です
なぜこのような会計処理が必要となるのでしょうか?
固定資産というものは、複数年にわたって使用して、売上に貢献することが前提となっています
例えば、1,000万円の設備を購入して、それを10年間使いながら毎年150万円の売上計上がされるとすると、その設備は10年間の毎年の売上に貢献しているのですから、一括で費用計上するのではなく、10年間で分割して費用計上すべきということになります
これは、企業会計原則にある「費用収益対応の原則」が考え方の元となっているのです
減価償却費の計算方法
企業会計原則注解を見てみると、減価償却費を計算する方法には以下のようなものがあります
《減価償却費の計算方法》
✔️ 定額法
✔️ 定率法
✔️ 級数法
✔️ 生産高比例法
今回は所得税法の原則的な計算方法である定額法について説明していきたいと思います
定額法による減価償却費の算出式は以下の通りです
減価償却費 = 取得価額 ✕ 定額法の償却率
取得価額には、購入代価に加えて、買入手数料、運送費、据付費、試運転費などの付随費用まで含めることになります
償却率は資産の種類によって異なってきます
これはそれぞれの資産の耐用年数の違いによるものです
資産種類 | 耐用年数 | 定額法の償却率 |
パソコン | 4年 | 0.250 |
自動車(小型車) | 4年 | 0.250 |
事務机(金属製以外) | 8年 | 0.125 |
建物(木造の事務所) | 24年 | 0.042 |
この必要経費は多すぎる?それとも少なすぎる?
事業所得の計算式から考えて、減価償却費の計算の仕方によって、必要経費が変化して所得が変わってしまいます
つまり、納税額が変わってしまうということになるのです
例えば、FP事務所を開設して、事務所(木造)を新しく1,000万円で建設し、そこで業務を開始したと仮定します
≪ケース①≫
1,000万円✕0.042=42万円
これが減価償却費であり、必要経費の適正額と言えます
≪ケース②≫
事務所が売上貢献しているという認識が薄くて費用計上を忘れた場合
このケースでは、必要経費0円となってしまいます
結果として、納税額が過剰となってしまうのです
≪ケース③≫
支払った1,000万円を全て経費として計上した場合
このケースでは、必要経費1,000万円となってしまいます
結果として、納税額が過少となってしまうのです
このように簿記の知識がないと個人事業なんてできません
知識がないことによって損をしてしまったり、場合によっては脱税と言われかねないのですから
減価償却という考え方は、一般の生活の中では出てこないものなので、改めて勉強して理解しなければならないという点が厄介なものだと思います
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